人工透析研究会会誌
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人工透析導入後5年目に発見された慢性骨髄性白血病の1剖検例
鈴木 靖林 直樹下條 文武大野 康彦池田 敏昭中村 忠夫荒川 正昭
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1985 年 18 巻 2 号 p. 213-217

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抄録
尿毒症患者または慢性透析患者における悪性腫瘍の合併についての報告は多いが, 慢性骨髄性白血病の合併の報告は3例のみである.私達は慢性透析開始後に腫瘤形成性急性転化をきたして死亡した慢性骨髄性白血病の1症例を経験したので, 輿味深い経過とともに剖検所見を合わせて報告する.
症例は45歳男性で, 昭和58年8月30日右前頭部痛と全眼球麻痺を主訴として当科に入院した.患者は51年3月より慢性透析を受けていたが, 55年7月白血球増多, 白血病裂孔を伴わない過形成性骨髄, アルカリフォスファターゼ・スコアーの低値, フィラデルフィア染色体の検索より, 慢性骨髄性白血病と診断され, その後特に自覚症状なく, busulfanにより白血球数も30,000-50,000/cummに維持されていた. 頭痛出現時の58年7月のCTでは, トルコ鞍近傍の腫瘤が認められた.
入院時の骨髄所見および末梢血所見は慢性期の像を呈していたが, 造影剤を用いてCTを再検したところ腫瘤は海綿静脈洞に存在し, さらにトルコ鞍, 蝶形骨洞にまで及んでいたため, 慢性骨髄性白血病の腫瘤形成性急性転化と診断した.頭部照射により症状はすみやかに改善したが, その後皮下腫瘤が多発し, 骨髄所見も急性転化を示し, 消化管出血とこれに続発した高カリウム血症のため死亡した.
剖検では, 腫瘤は皮下, 骨髄, 縦隔, 甲状腺, 消化管など全身臓器に及び, その光顕所見は大細胞型悪性りンパ腫様の所見を呈していた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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