日本透析療法学会雑誌
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まむし咬傷後にrhabdomyolysisをきたし急性腎不全に至った2症例
西村 学
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1986 年 19 巻 10 号 p. 943-949

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抄録

まむし咬傷後にrhabdomyolysisをきたし急性腎不全に至った2症例を報告する. 第1例は55歳男性, まむし咬傷後にコーヒー色の乏尿と左上肢の浮腫を主訴として入院した. 入院時検査では, 血清CPK 16,980IU/l, BUN 66mg/dl, 血清Cr 2.9mg/dl, 血清, 尿ミオグロビンは著増していた. 2回の血漿交換後, 腎機能回復し良好な経過をとった. 入院6日目に受傷肢の筋生検を行ったところ表層部の巣状壊死がみられた. 入院14日目に腎生検を行った. 組織像では, 間質にリンパ球と好酸球の浸潤が認められ急性間質性腎炎と診断した. 糸球体には著変なかったが尿細管にはtubulitisの所見が認められた.
第2例は75歳女性, 前胸部まで及ぶ左上肢の疼痛, 腫脹と無尿を主訴として入院した. 2日前にまむしに咬まれており, 1日尿量は30ml以下であった. BUNは65mg/dl, 血清Crは5.0mg/dl, 血清CPKは44,700IU/lであり血清ミオグロビンはアルドラーゼ同様著しく増加していた. 2回の血漿交換と7回の血液透析で利尿期に入り腎機能の回復をみた. しかし, その後CO2ナルコーシスによる意識障害をきたし数日間の呼吸管理を必要とした. さらに興味あることには, この患者は初診時高度の小球性低色素性貧血が認められ, 骨髄像にて赤芽球系の抑制がみられた. 貧血は病状の回復に伴い次第に改善してきた.
これら2例は, rhabdomyolysisと急性腎不全を伴っており血漿交換が奏効した. しかしながらともに, 血漿交換の副作用と思われる一過性の肝機能異常を生じた. また, 第1例はまむし咬傷後に急性間質性腎炎を呈した最初の報告である.

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