日本透析療法学会雑誌
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Valli catheterの臨床使用経験
宮崎 哲夫内藤 秀宗坂井 瑠美駒場 啓太郎西岡 正登
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1986 年 19 巻 10 号 p. 951-955

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抄録

従来使用されてきたCAPD用カテーテルは, 腹腔内位置移動や被包化現象のため, 排液障害がしばしば発生し治療には難渋する. 今回我々は主にこの排液障害を防止する目的で開発されたValli catheter (Valli cath.) を, 慢性腎不全症例5例に臨床使用し, 検討を加えた.
使用したValli cath.の形状は, 腹腔外部はTenckhoff double cuff catheter (Tenckhoff d. c. cath.) と同様であるが, 腹腔内部はカテーテル先端を3.5×8cmの楕円形バルーンで覆い, 腹腔内臓器より隔絶している.
カテーテル留置法は, 全症例とも観血的開腹術 (腰椎麻酔下4例, 局所麻酔下1例) で挿入した. 観察期間は最長15ヵ月, 最短2ヵ月 (総53 patient-months), 平均10.6 patient-monthsで, 現在全例ともCAPD療法継続中である. この期間中, 全症例ともバルーンの形状は良好に保たれ, ダグラス窩に固定され, 注排液障害もなく, また注排液速度もTenckhoff cathと比較すると早い結果を得た.
出口部感染, トンネル感染, カフ感染等はこの期間中発生しなかった. しかし, Valli cathの腹腔外部形状はTenckhoff d. c. cathと同一であることより, これらの合併症は同頻度で発生する可能性があり, さらに材質, 形状等につき研究開発される必要がある.

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