日本透析療法学会雑誌
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ミオグロビン尿症により急性腎不全を呈したnontraumatic rhabdomyolysisの1例
大橋 宏重石黒 源之安江 隆夫琴尾 泰典鎌倉 充夫杉山 明松野 由起彦和田 久泰住田 康豊渡辺 佐知郎杉下 総吉森田 則彦
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1986 年 19 巻 10 号 p. 957-962

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抄録

ミオグロビン尿症は骨格筋細胞の急速な崩壊により, 大量のミオグロビンが血中に放出されて発症する. その原因にはtraumaticなものとnontraumaticなものがあり, 近年ミオグロビンの測定がRIA法により容易になったこともあり, nontraumatic rhabdomyolysisと, それに伴う急性腎不全の報告も増加してきた. 今回, nontraumatic rhabdomyolysisにより急性腎不全を併発した1例を報告するとともに, これに類似した本邦報告例を検討し, さらに本症の発生機序ならびに臨床像の特徴について考察した.
症例は51歳の男性である. 1歳時に脳炎に罹患した. 昭和60年7月30日炎天下に約15km歩行し, 意識消失し, 某病院へ入院した. その後無尿が出現し, 発病3日目に当科へ転院した. 入院時, 体温37.5℃, 脈拍70/分, 血圧130/70mmHg, 胸・腹部に異常所見なく, 大腿部に腫脹と圧痛が認められた. 尿ミオグロビン190ng/ml, 血清Na 157mEq/l, K 5.1mEq/l, Pi 6.0mg/dl, クレアチニン9.5mg/dl, UN 125mg/dl, GOT 596IU/l, GPT 225IU/l, LDH 2,782IU/l, CPK 40,800IU/l, アルドラーゼ27.9IU/lと上昇し, Caは6.3mg/dlと低下した. 阻血下前腕運動負荷試験により, 遺伝性解糖系酵素欠損症は考えにくく, nontraumatic rhabdomyolysisによる急性腎不全と診断した. ただちに血液透析を開始し第2週より利尿をみて, 約2ヵ月後, 症状ならびに臨床検査値が改善し退院した.

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