日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者の肩関節部痛に関する研究 疼痛の特徴と関節可動域の測定
石川 勲四蔵 直人小市 裕子堀口 孝泰石井 博史篠田 晤石野 洋東田 紀彦尾内 善五郎斉藤 靖人赤崎 外志也川畑 義光杉下 尚康鈴木 志寿子玉田 安彦
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1986 年 19 巻 10 号 p. 963-967

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抄録

長期透析患者を管理していくうえで関節部痛, ことに肩の痛みを訴える患者が目立つように思われたので, 慢性血液透析患者138名を対象に肩の疼痛頻度・性質や関節可動域などについて調べた. その結果透析10年未満の患者の20.5%, 10年以上の66.7%が肩の痛みを訴えた. すなわち長期透析例では肩の痛みを訴える患者が有意に増加していた. 痛みは多くが両側性で, 主に夜間や安静時に重だるい, ずきずきするというものであった. 肩関節の屈曲, 伸展, 外転, 外旋の異常出現率はそれぞれ60.9, 60.9, 59.4, 50.0%で健康人にくらべ明らかに運動制限が認められた. また肩関節部痛の存在する症例で上記の異常出現率をみるとそれぞれ76.3, 39.5, 65.8, 87.5%と外旋制限を呈するもの, とくに70度以上の外旋ができないものが多く認められた. また透析期間と外旋可動域との間には有意な逆相関が認められた. 疼痛のある例に二次性副甲状腺機能亢進症が強いという関連性はえられなかったが, 疼痛を訴える例には手根管症候群や膝関節痛を同時に伴うものも多く認められた. 以上より, 透析患者の肩関節部痛には肩関節周囲に起こった慢性の病変が関係するように思われた.

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© 社団法人 日本透析医学会
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