日本透析療法学会雑誌
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CAPD患者におけるアルミニウム代謝異常について
熊野 和雄清水 辰雄南部 正人草刈 修一酒井 糾桜井 健治片岡 浩国友 哲之輔
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1986 年 19 巻 10 号 p. 993-998

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抄録

18名のCAPD患者においてAlの体内動態について検討した. CAPD患者においても, 血清無機燐値のコントロールのためにACPB剤は必要でその平均投与量はHD患者とほぼ同様で3.6g/dayであった. 我々の使用している2種類のCAPD液のAl濃度は平均約5μg/lと非常に低く, CAPD液よりのAlの体内移動はまず考えられず, 安全に使用できると思われた. CAPD患者の血中Al濃度をCAPD導入後, 経時的に測定したが, CAPD導入直後より平均50μg/l前後の高値を持続していた. DFO負荷試験 (DFO 30mg/kg, DIV) によりAlの体内蓄積を調べたが, 透析歴の長い患者の方が体内蓄積は大きかった. このようにCAPD患者においてもHD患者と同様にAlの体内蓄積は高頻度に認められた. Alの蛋白結合率の検討ではAlの平均約86%が蛋白と結合しており, このままではCAPDによるAl除去はあまり期待できないが, DFO投与により蛋白結合率は約29%に低下し, 有効なAl除去が可能となり, Alのクリアランスは平均27l/Wであった. AlとDFOはin vivoではその血中濃度およびCAPD液濃度よりみてin vitroのような1:1結合はしておらず, より複雑な結合様式が考えられた. Al蓄積に対する治療としてDFO投与はCAPD患者においても有効な療法であり, 週1回, 30mg/kgの静脈内投与は安全かつ有効な投与方法と思われた. また5名の患者ではACPB剤をCaCO3剤に変更したが, その投与量は平均5.4g/dayで, いずれも高Ca血症などの副作用は認めなかった. ACPB剤中止12ヵ月後にはAlの体内蓄積は有意に軽減しており, CAPD患者においてはCaCO3剤は安全に使用できるphosphate binderと思われた.

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