日本透析療法学会雑誌
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透析膜素材の血小板凝集能および血中プロスタグランディン系に及ぼす影響
石光 俊彦山門 実多川 斉
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1987 年 20 巻 7 号 p. 537-541

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抄録
慢性血液透析 (HD) 患者の長期予後を左右する循環器合併症の多くは動脈硬化性病変を基盤として発症し, その成因には血小板凝集動態が関与すると考えられる. 本研究では, 2種の素材の異なる透析膜がHD患者の血小板凝集能 (PLAG) およびprostaglandin (PG) 系に及ぼす影響を比較検討し, 透析器材の生体適合性について考察した.
慢性HD患者10例を対象とし, うち5例はcuprophane (CUPR), 他の5例はpolymethyl-methacrylate (PMMA) の透析膜を用いてHDを施行した. HD前および開始後経時的に動脈側より採血し, 以下の測定を行った. PLAGは種々の濃度のADP, collagen (CL), epinephrine (EP) を添加した際の最大凝集率を測定し, 血漿6-keto-PGF, thromboxane B2 (TXB2) は抽出精製後既報のRIA法にて測定した.
HD中白血球数減少はCUPRでより著明であったが, 血小板数は両透析膜とも有意な変化を示さなかった. PLAGはADPでは両透析膜で差がなかったが, 低濃度 (0.5μg/ml) CL (15分でPMMA: 44±10〈mean±SE〉, CUPR: 73±7%; p<0.01) および高濃度 (1μM) EP (60分でPMMA: 36±4, CUPR: 58±9%; p<0.025) では, PMMAにおいてCUPRに比べ有意に抑制された. 血漿6-keto-PGFはHD開始後-過性に増加し, その後は前値に復する傾向を示したが, この経時的変動はPMMA (前: 261±76, 15分: 519±137, 120分: 266±83pg/ml), CUPR (前: 287±67, 15分: 513±89, 120分: 358±41pg/ml) ともに同様であった. 一方血漿TXB2は, CUPRではHD開始後著明に増加しHD中高値を持続したのに対し (前: 401±35, 15分: 822±194, 120分: 635±70pg/ml), PMMAではHD中有意な変化を示さなかった (前: 420±97, 15分: 395±75, 120分: 381±53pg/ml).
以上の成績より, PMMAはCUPRに比べHD中PLAGや血中PG系などの血小板凝集動態に好ましくて影響を与え, さらに動脈硬化進展に抑制的に働く可能性があると思われる.
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© 社団法人 日本透析医学会
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