日本透析療法学会雑誌
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10年以上経過した透析患者の現況
横山 睦子小柳 久枝大島 譲二小池 勝沢田 皓史新井 綾子村井 キヌエ
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1987 年 20 巻 8 号 p. 603-607

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抄録

当院とその関連施設において, 10年以上透析歴のある患者の現状分析ならびに透析開始後1-2年時との比較を行った. 対象は10年以上透析歴のある患者男子19名, 女子11名で平均透析歴11.4年である. 導入時平均年齢31.1歳, 平均体重52.4kg, 平均収縮期血圧162mmHg, 拡張期血圧98mmHg, BUN 104mg/dl, Cr 13.2mg/dlで透析開始した. これらの患者の透析開始1年後と10年以上経過した現在の各データの比較では, 透析前BUNは有意差なく, BUN排除量は10年後有意に上昇している. Htは1年後が22%, 10年後が28%で有意に上昇し栄養状態の改善が示唆された. Na, Kについては10年後が有意に上昇しているが, 血圧は142/79mmHg, 心胸比は44%で有意に低下しており, 十分な除水が行えれば高Na透析液の使用下でも, 血圧はよくコントロールされている. 社会復帰状況は, アンケート調査によると夜間透析患者が64%と半数以上を占め, 完全社会復帰をしている. 昼間透析群では働いていない患者が40%を占めるが体力がない人の他に仕事がない人が含まれる. 食事に関しては, 家庭での食事ではとくに制限をしていない患者が81%を占め, 90%以上が外食もしている. 食事制限の厳しくないことは患者の社会生活を豊かなものとする最も重要な条件だと考える. 10年後の身体状況に関しては, 調査をすれば何らかの訴えはあるが, 患者の多くは元気に働いており, 現在が最も充実していると回答している. 現在は合併症が少ないが, 今後骨に関する訴えが増加するものと思われる.

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