日本透析療法学会雑誌
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透析患者の妊娠と分娩の看護
風間 真理子坂田 佐代子松本 邦子鈴木 亨下条 文武荒川 正昭
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1987 年 20 巻 8 号 p. 609-613

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抄録

慢性血液透析患者が妊娠して児を得ることは困難と考えられているが, 今回私達は, 2回目の妊娠が無事継続して分娩に至り, 母児共に順調な経過をとっている1症例 (31歳, 女性: 透析歴3年) を経験したので, 看護面より若干の検討を加えて報告する.
初回出産は透析2年目であるが妊娠26週に辺縁洞破裂のため早産した. 児は880g, 未熟肺のため17時間後に死亡した. 透析3年目再度妊娠し, 妊娠16週目腹部緊満症状が出現し, 産科へ入院した. 初回の経験を踏まえて, 最低妊娠32週まで継続させることを目標に, 透析室と産科で協力体制をとった. 私達は, 1) 妊娠の継続を計り, 母児ともに最良の状態で分娩に臨めるよう援助することと, 2) 不安と苦痛の緩和に努めることを看護目標にあげた. 看護上の問題点として, 1) 子宮筋収縮による腹部緊満症状がある, 2) 透析中に血圧低下が起きる, 3) 胎児に対する不安がある, 4) 全身掻痒感と長時間透析による苦痛があるなどをあげ, これらの問題点を中心に看護を展開した. 看護面としては, 妊娠20週頃から透析中に血圧低下と腹部緊満がみられたが, 注意深い綿密な観察に努め, 透析を十分行えるように検討を重ねて対処した. また胎児に対する不安や透析中の苦痛があるため, それらを少しでも緩和させ, 夫や家族とともに励ましたことが重要であった. 全身の掻痒感は妊娠中の肝機能障害とともに現われたが, 分娩後に消失した. 患者は, 妊娠34週に経腟分娩にて, 1,802gの男児を出産した. 母児ともに順調な経過を辿り, 現在に至っている.

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