日本透析療法学会雑誌
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長期透析患者にみられた肩甲上神経麻痺
合屋 忠信阿部 哲哉佐内 透泊 真二内藤 正俊
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1987 年 20 巻 8 号 p. 615-618

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抄録

頑固な肩痛を訴える長期透析患者の存在は多くの透析専門医の認識するところである. 私どもは昭和60年8月から12月までの5ヵ月間に, こうした症例で肩甲上神経絞扼障害と診断した6例に神経除圧術を行い, 著効を得たので報告する. 患者は男2, 女4, 年齢は36-55歳 (平均49.5歳), 透析導入から発症までの期間は76-121ヵ月 (平均107ヵ月) で, 6例中5例は内シャント作成肢の発症である. 診断は肩関節および肩関節周囲筋の整形外科的診察, 計測, 試験的肩甲上神経ブロック, 肩関節造影, 肩甲上神経の棘上筋棘下筋への運動神経終末伝導速度の測定によった. 肩甲上神経終末伝導速度は, 患側が健側あるいは患側腋窩神経に比較して著明な遅延がみられた. 手術は気管内挿管全身麻酔下で, 肩甲棘上方の横皮切で僧帽筋と棘上筋を鈍的に切離して肩甲切痕部に到達し, 上肩甲横靱帯を切離して肩甲上神経の除圧を行った. 術後7-10ヵ月 (平均8.5ヵ月) の観察で, 肩痛は5例に, 肩甲切痕部の圧痛は5例に, 肩関節の外転外旋障害が4例に, 肩関節周囲筋の筋力は外旋およびscapular protractionで5例に改善をみた. 肩甲上神経の終末伝導速度の遅延は, 平均値で棘上筋は6.4msecから3.9msecへ, 棘下筋は7.3msecから5.1msecに改善された. 総合的手術成績の評価は3例が優, 2例が良, 1例が不良であるが, 血腫, 感染, 神経損傷, 関節可動障害等の手術合併症はみられなかった. 上肩甲横靱帯は硬く肥厚しているが, 組織学的にアミロイドの沈着は認めなかった.

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