日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
慢性血液透析患者における最大有酸素運動能力の制限因子に関する研究
露木 和夫山家 敏彦赤池 真野村 正征相原 正彦張 光哲海老根 東雄
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 20 巻 8 号 p. 619-624

詳細
抄録

慢性血液透析 (HD) 患者の最大有酸素運動能力の制限因子を検討する目的で, 35例のHD患者と52例の健常者に対して, 心機能および末梢循環機能を評価し, またヘモグロビン濃度を測定した. HD患者は心疾患の合併がなく, β-遮断剤やdigitalis製剤の服用もしていない症例であった. また運動負荷試験の中止理由が心電図異常や血圧異常でない症例であることを厳守した. 全対象において最大運動負荷試験より得られた最大酸素摂取量, 最大pressure rate productからBruceの計算式に従いfunctional aerobic impairment (FAI), left ventricular impairment (LVI) およびperipheral circulatory impairment (PCI) を求めた. HD患者のヘモグロビン濃度は最大運動負荷試験の前に測定した.
その結果, 次のような成績が得られた. HD患者のFAI, LVIおよびPCIは, 健常者と比較して有意に高い値を示した. またHD患者のPCIはLVIよりも高値を示した. 健常者のFAIはLVIとPCIの両方に有意な相関関係を認めた. しかしHD患者のFAIはLVIとは相関せず, PCIのみに有意な相関関係を認めた. HD患者のFAIはヘモグロビン濃度との間に有意な相関関係を認めなかった.
以上の成績からHD患者の最大有酸素運動能力の制限を決定する因子としては, 心機能の低下よりもヘモグロビン濃度の低下以外の末梢循環系の機能の低下に関係するものと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top