日本透析療法学会雑誌
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慢性血液透析患者の中間型リポ蛋白 (IDL) の性状
園部 美弥彦湯川 進西川 治日比野 彰宮井 利彦前田 孝夫野本 拓西川 紀子西出 巌
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キーワード: アポ蛋白, 血液透析
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1987 年 20 巻 8 号 p. 625-630

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抄録

透析の有無にかかわらず慢性腎不全患者では中間型リポ蛋白 (IDL) の増加が認められる. IDLはatherogenicなリポ蛋白 (Lp) の1つとして知られ, 慢性血液透析患者 (HD) における動脈硬化症との関連で注目されているが, その性状については十分検討されていない. そこで今回, HD-IDLの性質について健常人 (C) のそれと対比した. 性, 年齢をマッチさせたHDおよびCの血清をHavelらの方法で超遠心を2回くり返し, IDLを得た. このIDLを透析脱塩後, その化学組成およびアポ蛋白 (アポ) を分析した. また一部でBiogel A-5mを用いたゲル濾過およびPAG電気泳動 (PAGE) を施行した. HDはCに比べ, 血清で中性脂肪 (TG) の増加とアポC-IIIの増加を示した. 一方総コレステロール (TC) やアポB, C-II, Eには差異はなかった. 血清IDL総量の増加を示した. その化学組成では蛋白, コレステロール (Ch) リッチでTGはむしろ低値を示し, Chのエステル比も低下していた. アポ蛋白組成では, アポBの増加とC-II, C-III, Eの低下を示した. その結果として, E/B比の著明な低下がみられたが, C-II/C-III比には差異はなかった. またゲル濾過およびPAGEでは両者で著明な差異は認められなかった. 以上の結果より, HDで増加しているIDLはCと比較すると, その化学組成やアポ蛋白組成では全く異なった性質を有するLpであることが判明した.

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