抄録
血液透析患者16例に口渇に関するアンケート調査を行い, 15例に口腔内乾燥感の存在を認めた. これらについて唾液分泌量, 唾液成分濃度 (Na, K, Cl, P, BUN, Cr, 浸透圧, アミラーゼ, pH) を透析前後で測定した. その結果, 血液透析患者では唾液分泌量は健常者に比し, 透析前後とも低下しているが, 透析後では透析前に比し有意に増加していた. また唾液成分濃度は全測定項目とも透析後低下ないしは低下値向を示した. なかでも透析後の唾液浸透圧減少率と唾液流出量増加率との間には正の相関が認められることより, 透析患者の口腔乾燥因子として浸透圧の上昇が関与している可能性が示された. また一部の症例で耳下腺造影を施行したところ, 主導管の拡張, 腺系の萎縮等が5例中3例に認められ, 唾液分泌量の少ない不可逆性の口腔乾燥症の存在も明らかとなった.