副甲状腺摘出術を施行した42例 (男性29例, 女性13例) 148腺において, 組織学的所見と臨床所見との比較検討を行った. 組織学的にはび漫性および結節性過形成の分類の他, 画像解析装置を用いて, 切片上の努酸性細胞面積と全面積を測定し, 両者の比 (R) を求めた. 各腺と症例毎にI群 (R<1%), II群 (1≦R<5%), III群 (5≦R<10%), IV群 (10%≦R) の4群に分類した. 臨床的には年齢, 透析期間, 血清PTH-C, Ca×iP積, 腺重量を用いた. 結果: 結論1) 手術時の年齢, 透析期間, PTH-C, Ca×iPにおいては, 性差がなかった. 2) 全摘出腺148腺を各腺毎のRで分類すると, I群が最も多く, II群を加えると78.4%を占めた. また, 部位別の分類では差を認めなかった. 3) I群はび漫性過形成が多く (63.3%), II群より結節性過形成が多く認められ, IV群では結節性過形成が優位であった (76.9%). 全体では僅かに結節性過形成が多かった (51.4%). 4) 症例毎の分類では, 明らかな性差は認められなかった. I群はIV群と比較して透析期間が短く, Ca×iPが小さい傾向があった. しかし, 全群とも年齢に差はなく, PTH-Cにも差を認めなかった. 5) PTH-Cは, 総重量とは, r=0.475, p<0.01の正の相関があった. 総重量と全面積は正の相関があり, PTH-Cは全面積ともr=0.396, p<0.01の正の相関があった. 好酸性細胞面積との散布をみると, 面積が10mm
2未満の症例ではPTH-Cは幅広く分散し, それ以上の症例では分散は小さくなり, 明らかな増加も減少も見られなかった. しかし, 10mm
2以上の15例における相関をみるとr=-0.516, p<0.05の負の相関を認め, またRが5%以上である16例においてPTH-Cとの相関をみると, 同様にr=-0.498, p<0.05の負の相関を認めた. 以上より慢性腎不全では, 同細胞が直接PTHを産生している可能性は少ないと考えられた. 6) 今回検討した42例には, 3°HPTを疑わせる症例はなかった.
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