抄録
過去12年間に経験した慢性腎不全805例中大動脈瘤の合併を20例 (2.5%) に認めた. うち血液透析患者は9例を占め, 本合併症の病態や治療法, 予後につき検討を加えた.
20例の平均年齢は66.8歳. 性比は男子14女子6例, 臨床症状は各部の疼痛が65%と最も多かった. 大動脈瘤発生部位は胸部7, 腹部10, 胸・腹部3例, 原因別には動脈硬化性9, 解離性6, 不明6例であった.
血液透析 (HD) と大動脈瘤手術 (OP) の有無により以下の4群に分けた. I群 (9例: HD (-), OP (-)), II群 (5例: HD (+), OP (-)), III群 (2例: HD (-), OP (+)), IV群 (4例: HD (+), OP (+)) で, 平均年齢はI>IV>III>IIの順に高く, 大動脈瘤の平均の大きさはIII>IV>II>Iの順に大きかった. 手術方法は大部分でWoven Dacronグラフト置換術, 大動脈ラッピングを施行し, 2例の胸部大動脈瘤手術では術中にV-AバイパスとHDを行った. 手術を行ったIII, IV群の比較では, 出血量, 輸血量, 輸液量のいずれもIV群が多かったが術後退院までの平均荒間はIII群38日, IV群26日であった.
大動脈瘤以外の合併症では高血圧が85%, 心肺系疾患が80%を占め, 予後は4例生存, 16例 (80%) が死亡した. 各群別にはI群が全例死亡, II群の死亡3例はすべて大動脈瘤破裂に因った. 手術を行ったIII群の2例中1例, IV群の4例中1例が現在も生存中であり, 後者の死亡3例中1例は術後2年を経過していた.
本邦におけるHD患者の大動脈瘤手術は自験4例を含め計9例報告されている. 過去の報告例と自験例の成績から, 透析人口の増加に伴い将来こうした重篤な合併症が増加した場合, 慎重な準備のもとに積極的に手術を考慮すべきことを強調した.