1990 年 23 巻 6 号 p. 623-631
1966年9月より1989年6月まで当施設で慢性維持透析患者の併存病変に対して施行した緊急手術72例, 待期手術164例について比較検討した. 手術死亡率は, 緊急手術で22%, 待期手術で0.6%であり, 術後合併症も緊急手術で多かった. 最近, 糖尿病性腎症例の緊急手術例を3例経験したが, 全例に術前合併症を認め, 術後合併症も心不全や感染症を全例に認めた. 糖尿病性腎症緊急手術例では, 特に水分管理と院内感染予防が重要である. 低分子ヘパリンを用いた術後初回透析で凝固時間の延長と後出血を認めず十分に施行できた. 術後透析および術直前透析では, 低分子ヘパリンやnafamostat mesilateを用いた透析か, EVA膜少ヘパリン透析が有用である. 汎発性腹膜炎等では手術にて感染および壊死巣を除去し, その後透析を行い, 上部消化管穿孔等では, 前日透析してあれば即手術を, 前々日の透析であれば透析後に手術をするのがよいと考えている.