日本透析療法学会雑誌
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慢性透析患者の不明熱に関する検討
古川 敦子橋根 勝義宮本 忠幸田村 雅人沼田 明湯浅 誠今川 章夫香川 征
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1991 年 24 巻 2 号 p. 163-166

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抄録
1976年4月から1989年4月までに経験した慢性透析患者の不明熱症例36例 (55 episodes) について臨床的検討を行った. 1か月以上にわたり37℃以上の発熱が続き, この間原因の診断が困難であったものを不明熱と定義した. 対象患者は血液透析患者31例, 腹膜透析患者5例であった. 腎不全の原疾患は慢性糸球体腎炎が24例, 糖尿病性腎症が5例, 嚢胞腎が3例, 慢性腎盂腎炎, 腎硬化症, SLE, 腎癌術後がそれぞれ1例であった. 不明熱の原因疾患は結核が10 episodes (18.2%), 腎盂腎炎が4 episodes (7.3%), 肺炎が2episodes (3.6%) であった. 不明熱の発症時期は透析導入から1年未満が24episodes (43.6%) と最も多かった. 不明熱発症時に白血球増多症を示さないものが45 episodes (81.8%), このうちCRPも陰性であったものは13 episodes (28.9%) で炎症所見のないものが多くみられた. 不明熱に対し無治療で解熱したものは13 episodes (23.6%), 抗生剤により解熱したものが21 episodes (38.2%), 抗生剤投与に反応せず抗結核剤投与に反応したものは10 episodes (18.2%) であった. 透析患者の不明熱で特徴的なことは原因疾患として結核が多いこと, 炎症反応が弱いこと, 透析導入後1年未満に多いことが挙げられる. したがって, 透析患者の不明熱においては常に結核を念頭に置き, 疑われるときには早期に抗結核剤の投与を行うべきであると考える.
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© 社団法人 日本透析医学会
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