日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
CAPD患者の下大静脈径の検討
増永 義則安藤 康宏大野 修一手塚 俊文浅野 泰
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 25 巻 12 号 p. 1337-1342

詳細
抄録
超音波断層法で描出される下大静脈 (IVC) の安静呼気時最大径 (IVCe), 安静吸気時最小径 (IVCi) およびcollapsidility index (CI) [(IVCe-IVCi)/IVCe] は中心静脈圧, 右心機能を反映することが知られている. 我々はすでに血液透析中, 除水による体液量の減少に伴いIVCe, IVCiが減少, CIが増加し, 特にIVCeと循環血液量の間には有意の一次正相関があることを報告している. 血液透析に比し除水が緩徐で, 循環血夜量の変化が少ないCAPDでは, IVC径も安定していることが予想される反面, 腹腔内の液貯留がIVCの形態に影響を及ぼす可能性がある. 今回我々は安定維持期CAPD患者 (n=13) のIVCの形態を検討し, 以下の結論を得た.
1) 安定維持期CAPD患者では, IVCe (mean±SE) はヘマトクリット値とともに, 透析液交換中有意な変化はなく (排液前12.2±0.8, 排液後11.9±0.7, 注液直後11.5±0.8mm), 循環血液量の安定を裏付けるとともに, 2l程度の腹腔内液貯留はIVCeには影響しないと考えられた. 2) 一方IVCi, CIは排液前8.6±0.8mmおよび0.30±0.04に対し, 排液後はそれぞれ7.2±0.7mmおよび0.39±0.05と有意に変化したことから, 腹腔内液貯留が吸気時のIVCの虚脱を抑制すると考えられた. 3) 排液後あるいは注液後のIVCeとCTRとの間に有意な一次正相関 (いずれもr=0.57, n=13, p<0.05) がみられたことから, IVCe値がHD患者同様CAPD患者においても体液量の指標となる可能性が示唆された.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top