透析関節症の病態を明らかにするために, 肩関節および股関節に注目し, 関節周囲の軟部組織を超音波画像で描出した. 関節包膨隆度の指標として, 肩関節ではshoulder-capsular distance: SCD, 股関節ではhip-capsular distance: HCDを測定し, 関節症状, 骨X線所見, 手根管症候群 (CTS) の手術歴, 血液生化学所見との関係を検討した. 対象とした血液透析 (HD) 患者は, 168例 (男116例, 女52例) で, 平均HD期間は107.0±75.6か月, 平均年齢は49.4±12.2歳であった. また, 対照として, 腎機能正常者10例のSCD, HCDを計測した.
HD患者の左右のSCD平均値: mean-SCDと左右のHCD平均値: mean-HCDは, 腎機能正常者のそれらに比べ増加していた (mean-SCD: 6.8±1.7mm vs 5.5±0.9mm, p<0.05, mean-HCD: 17.5±5.5mm vs 13.6±1.5mm, p<0.01). mean-SCDおよびmean-HCDとHD期間との間にはそれぞれ, r=0.696, p<0.001; r=0.606, p<0.001と正の相関が見られたが, 血清β
2ミクログロブリン (β
2-MG), C末端PTH, アルミニウムとの間には関連はなかった. 肩関節痛, 股関節痛を認めるグループのSCDおよびHCDは, 認めないグループのそれらに比べ増加していた. CTSの手術歴, 手根骨骨透亮像を認めるグループのmean-SCDおよびmean-HCDは, 認めないグループのそれらに比べ増加していた. SCDが7mm以上の肩関節のうち13.4%に上腕二頭筋腱長頭周囲または肩峰下滑液包内のecho-free spaceが観察された. 肩関節内視鏡的滑膜切除術では, 滑膜増生が観察され, β
2-MG由来のアミロイド沈着を認めた. また, 股関節MRI検査では, 関節液貯留と滑膜肥厚の所見を得た.
以上の結果より, HD患者の肩関節および股関節の関節包は, 透析の経過と共に膨隆度を増すことが示された. また, 関節症状のある症例や透析アミロイドーシス合併例では関節包膨隆度が強かった. 関節包の膨隆は, 関節液の貯留と滑膜肥厚を示唆し, 透析関節症の原因の一つであることが明らかになった.
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