抄録
症例は53歳, 男性. 約8年のCAPDを行っておりこれまで2回の腹膜炎歴があったが, 保存的加療で治癒していた. 今回も腹膜炎を発症したが, 排液の培養は陰性で, 発熱, 白血球増多もなかった. 抗生剤投与等保存的治療を行ったが, 排液混濁がおさまらないため, 腹腔カテーテルを抜去し血液透析に移行した. その後8日間は自他覚所見は異常なかったが9日目になり強度の腹痛が出現, 腹壁筋性防御, 発熱, 白血球増多も認めた. このため開腹術を行った. 腹腔内は全体に癒着, 白苔も多く穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎と判明した. 虫垂切除とドレナージで治癒した. CAPD施行中の腹腔内臓器穿孔による汎発性腹膜炎は, 腹腔内の灌流により自他覚所見が修飾されるためその診断は容易ではなく, 本例のような症例があることも念頭においた腹膜炎の治療が必要と考えられた.