日本透析療法学会雑誌
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MRIで異常所見を認めたuremic encephalopathyの1例
野替 正二松原 光伸小川 正美齋藤 敬太郎
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キーワード: 尿毒症性脳症
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1992 年 25 巻 7 号 p. 709-712

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抄録
症例は数年前から腎機能障害を指摘されていた34歳の女性. 高度腎機能低下に伴いuremic encephalopaphy (UE) と考えられる神経症状を合併し当院に入院した. 血液透析導入により著しい神経症状の改善を認めた. 本症例では透析導入前後の頭部MRIおよびCT像を詳細に検討することができた. 透析導入前, 症状も伴った時期ではMRIで両側淡蒼球, 内包, 放線冠とその周辺領域にT2強調像では強い高信号域を, T1強調像では強い低信号域を認めた. さらに脳橋部にT2強調像にて中等度の高信号域を認めたが, T1強調像では同部位に異常信号は認められなかった. CTではMRIにほぼ一致した部位に低吸収域を認めたが脳橋部には異常を認めなかった. 血液透析4回施行後の第10病日, すでに臨床症状が消失しているにもかかわらずMRI上両側淡蒼球, 内包, 放線冠周囲に軽度ながら透析導入前と同様な異常が認められ, CTでも同部位にわずかながら低吸収域が認められた. しかし血液透析16回施行後の第54病日にはMRI, CT像共に正常化していた. UEの詳細な発症機序はまだ不明であるが, 本症例の臨床像, MRI像の変化より広範囲な浮腫状の変化がUEの1つの特徴と考えられた.
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