抄録
低血圧を示す長期血液透析患者21例に新しい交感神経作動薬であるamezinium metilsulfate (Am) 1日10mgを5週間経口投与し, その有用性と安全性を検討するとともに, その昇圧機序を心臓超音波検査によって分析した. 副作用のため3例で投与を中止したが, いずれも尿閉, 頭痛など軽微な副作用であり, 投与中止によってただちに消失した. Am投与により, 平均血圧は透析開始時88.2±9.5→95.1±16.1mmHg (m±SD; p<0.05), 透析中最低値60.1±11.7→69.7±14.2 (p<0.01) と, 有意に上昇した. 左室径, 心拍数, 心拍出量などの心パラメータは不変であり, 総末梢血管抵抗係数は有意に増加した (845±267→968±230×10-4dynes・sec/cm7; p<0.05). 血圧と総末梢血管抵抗の増加量が比例することから, Amの昇圧機序が主に末梢血管収縮に基づくことが示された. 治療前の心拍出係数 (CI) が4l/min/m2未満の患者では心拍出係数がわずかではあるが有意に増加し, Amによる昇圧機序の一部が心刺激作用を介することが示唆された. また, 血圧が低い患者ほどAmの昇圧効果が大きいことは, 交感神経活性の低下が透析低血圧の主因であることを支持している.