日本透析療法学会雑誌
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高Na透析の血圧, ヘマトクリット, 血漿浸透圧および血管作動性物質に及ぼす影響
八木 祝子猪狩 友行石井 策史西山 敬介平田 恭信
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1993 年 26 巻 2 号 p. 153-159

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抄録
高Na透析の血圧, ヘマトクリット (Ht), 血漿浸透圧および血管作動性物質に及ぼす影響を標準透析の場合と比較した. 高Na透析は標準透析液 (Na 140mEq/l) に高NaCl液を注入してNa濃度を155mEq/lに上げて前半2時間透析し, 後半は標準透析液に戻す方法で行った. 血圧は携帯型自動血圧計で24時間測定した.
透析前後の体重と除水量は両透析間で差異がなかったが, 透析中の血圧は高Na透析で有意に高く, 透析終了後は有意ではないが高い傾向が24時間認められた.
高Na透析では標準透析に比べて血漿Na濃度が透析2時間後および終了時に有意に高く (p<0.01), 2時間後の血漿浸透圧も有意に高かった (p<0.05). 一方, Htは高Na透析で透析前および2時間後で有意に低値であった (p<0.001).
血漿心房性Na利尿ペプチド濃度 (ANP) は両透析で透析により著明に減少した. 血漿レニン活性 (PRA) は両透析ともに透析中に有意な変化がみられなかったが, アルドステロン濃度 (PAC) は高Na透析中に有意の減少がみられた. 血漿ノルアドレナリン (NA) およびアドレナリン濃度 (A) は両透析で透析2時間後に有意に減少したが, 終了時にはほぼ透析前値に復した. 両透析の間で透析前, 2時間後および終了時のANP, PRA, PAC, NAおよびA値に有意の差異がみられなかった.
高Na透析では透析中の血漿Na濃度および血漿浸透圧がより高く維持されるために細胞内および組織間から血管内へ水の移動が速やかに行われ, 循環血漿量の減少率が少ないことが血圧の安定に寄与すると考えられる.
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