日本透析医学会雑誌
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毒キノコ (ドクツルタケ) 中毒により急性腎不全をきたした1症例
福内 史子飛田 美穂佐藤 威猪口 貞樹澤田 裕介
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1995 年 28 巻 11 号 p. 1455-1460

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抄録
毒キノコ (ドクツルタケ) を誤って食し, 急性腎不全, 肝機能障害, 血液凝固異常をきたした症例を経験したので報告する.
症例は51歳, 男性. 主訴は嘔気, 嘔吐. 1993年7月22日夕食時に登山の際に自分で採取してきたキノコ (真っ白で高さ10cm) を油炒めにして3本食べた. 翌朝より激しい嘔吐が出現し, 同日夜, 当院救命救急センターを受診した. 来院時, 意識清明, 血圧110/70mmHg, 脈拍64/分, 肝, 腎, 脾を触知せず, 胸腹部に理学的異常所見を認めなかった. 入院時血液検査成績では, クレアチニン (sCr) 4.4mg/dl, 尿素窒素 (BUN) 29mg/dl, GOT 238U/l, GPT 614U/lと腎機能, 肝機能の障害を認めた. 来院時すでに無尿状態であった. 入院後, ただちにHDF (血液濾過透析) を施行. 絶食とし, 中心静脈栄養管理下におき, 経口腸管洗浄液, 解毒剤 (glutathione), ビタミンK2, ビタミンC, ビタミンEを投与, さらに血中FDPの上昇を認めたため, メシル酸ガベキサートの投与を行った. 入院後約5日でGOT, GPTは正常化したが, 入院後10日間は無尿であり, 血液透析を必要とした. 入院11日目より利尿がつきはじめ, 入院17日目には利尿期となった. 以後, 順調に経過し, 入院50日目にsCr 1.1mg/dl, BUN 13mg/dl, GOT 31U/l, GPT 36U/lにて退院した.
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