日本透析医学会雑誌
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糖尿病性腎不全による透析患者の味覚障害と塩分, 水分管理
金澤 良枝小倉 誠岡田 知也高橋 創韓 明基中尾 俊之
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1995 年 28 巻 7 号 p. 1063-1067

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抄録

糖尿病性腎不全透析患者に定量的味覚調査を行い塩分味覚障害を明らかにした. さらに定期的食事指導下における, 塩分, 水分管理状況を明らかにし, 塩分味覚障害との関連性および血糖コントロールとの関連性について検討した.
対象は, 糖尿病性腎不全による透析患者26名 (血液透析: DM-HD 21名, CAPD: DM-CAPD 5名) 平均年齢54.3±8.4歳である. 対象者に全口腔法による味覚調査を行い, 非糖尿病透析患者および健常者を対照とし比較した. また対象者のうち18名で塩分および水分摂取量調査を行った.
糖尿病透析患者の味覚感知濃度は22.8±13.2mmol/l, 塩分認知濃度は33.7±10.8mmol/lで対照群に比べ有意 (p<0.001) に悪かった. 塩分認知濃度と1日の塩分摂取量および水分摂取量とは, 相関関係を認めなかった. DM-HD, DM-CAPDの1日水分摂取量は塩分摂取量と相関関係 (p<0.001) を認めた. しかし, HbAlcとは相関関係を認めずDM-HDの透析前血糖値とも相関関係を認めなかった.
以上より, 糖尿病透析患者では塩分味覚が非糖尿病透析患者より有意に悪かったが, 味覚障害が必ずしも塩分摂取量の過剰に結びつくとは限らないと考えられた. 糖尿病透析患者の水分摂取量は塩分摂取量の多少により規定され血糖コントロールの影響は少ないことが示唆された. 本症患者の塩分, 水分管理において味覚障害の程度を把握することは, 食事指導上の意義が大きいと考えられた.

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