日本透析医学会雑誌
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一時的な飲酒後の低血糖を契機として維持透析導入となった1例
菊池 洋外牧 洋之上村 順一田中 耕治
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1996 年 29 巻 3 号 p. 219-223

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抄録
症例: 43歳男. 数年前より慢性腎不全を指摘され一時的な肝機能の低下の既往があった. 94年4月13日BUN 45.4mg/dl, Cr 5.7mg/dlだったが自覚症状はなかった. 94年5月1日夕食を摂らずに眠前に焼酎を約300ml飲んだ. 翌朝瞳孔散大, 昏睡で発見され近医に入院となりbrain CT検査上異常なく血液検査にて低血糖が原因と判明した. 50%糖の静注で意識は改善したが腎機能の低下がみられ本院紹介となった. 経過: 転院時意識清明だったがBUN 97mg/dl, Cr 9.9mg/dlと腎機能の著明な低下が見られたので透析導入となった. 以後腎機能の回復なく週3回の外来維持透析に移行し現在に至る. 入院中の肝機能は異常なし. 75gGTTは境界型だった.
考察: 飲酒後の低血糖は比較的長時間の絶食後の飲酒が必要といわれているが本例では短時間の絶食と比較的少量のアルコール量で強い低血糖がみられている. 腎機能の低下と肝臓の予備能の低下が原因と思われる. 慢性腎不全の管理上高血糖のみならず低血糖にも十分な注意が必要と認識させられた. 飲酒後の低血糖を契機として腎機能の急性増悪が生じ維持透析導入に至った例の報告は少ないと思われる.
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