日本透析医学会雑誌
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透析患者における副甲状腺機能低下症例の臨床的検討
岡田 知也金林 祐加高橋 宏実高橋 創小倉 誠中尾 俊之鈴木 利昭北條 敏夫
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1996 年 29 巻 7 号 p. 1131-1137

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抄録

近年増加している透析患者における副甲状腺機能低下症例の臨床像について検討した. 血液透析 (HD) 患者183名 (平均透析歴8.6±6.5年), 腹膜透析 (CAPD) 患者38名 (平均透析歴19.6±19.4か月) を対象とし, 各患者の最長透析歴時の検査でintact-PTH 65pg/ml以下の症例をlow-PTH群, それ以外の症例をnon-low群に分けて, 年齢, 透析期間, 原疾患, 治療内容, 自覚症状, PTHの推移等を比較検討した. HD患者では64名 (35.0%), CAPD患者では24名 (63.2%) がlow-PTH群に相当した. HD患者では透析期間の短い症例にlow-PTH群の割合を多く認めた. HD, CAPD患者ともに年齢分布, 原疾患, 骨関節症状の頻度による両群間の差異は認めなかった. HD患者において高Ca血症の頻度はlow-PTH群に有意に多かった (p<0.001). CAPD患者において3.5mEq/l Ca濃度透析液使用者に比し, 4mEq/l Ca濃度透析液使用者にlow-PTH群の症例を多く認めた (p<0.001). HD患者の透析導入時C-PTHはlow-PTH群2.7±1.5ng/ml, non-low群5.2±3.4ng/mlであり, low-PTH群で有意に低値であった (p<0.01). CAPD患者の透析導入時のintact-PTHは, 両群ともに200pg/ml台であるが, 導入4か月以降low-PTH群では約50pg/ml前後を推移した. HD, CAPD患者ともにlow-PTH群は透析導入時以降PTHは継続して低値の傾向にあり, 副甲状腺機能低下の成因を考える上で保存期腎不全からの副甲状腺機能の推移も考慮する必要があると考えられた. 現時点でこれら副甲状腺機能低下症例は高Ca血症以外に特に臨床上問題を起こしていないがその予後について検討を要すると考えられた.

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