日本透析医学会雑誌
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維持透析患者におけるbrain natriuretic peptideの意義
中島 貞男熊谷 裕生梅田 俊一河野 浩貴猿田 享男
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キーワード: 血圧
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1997 年 30 巻 5 号 p. 321-327

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抄録

慢性維持血液透析患者における, brain natriuretic peptide (BNP) の意義を明らかにするために, 9か月の間隔をあけて (95年1月と同年10月), 30名の同一患者でBNPとdry weight, 胸部X線上での心胸郭比 (CTR),血圧との関係を検討した. 透析日の透析前値では, 透析により有意なBNPの低下が見られた (95年1月, 10月ともにp<0.002). BNPと平均血圧 (MBP), dry weight (DW), CTR, 透析による除水量 (ΔBW), 透析期間との相関を検討したが, MBPのみと相関が得られた (1月p<0.02, 10月p<0.007). さらに, 1月と10月の平均血圧の差 (ΔMBP) とBNP値の差 (ΔBNP) の間に, r=0.69, p<0.001の極めて良好な正相関が得られた. しかし, ΔBNPとΔDW, ΔCTRには, 相関を認めなかった. また, 全患者の心臓超音波検査によるejection fractionは0.69, EA比は0.66であり, BNPとの間に相関を示さなかった. BNPは, 13名で同時に計測したANPと, 透析前後とも良好な正相関を示した (p<0.001, p<0.001). また, 透析前後のBNPの差とANPの差も, r=0.76 (p<0.003) の有意な相関を認めた. 以上より, BNPは比較的心機能の保たれている慢性透析患者において, 血圧およびANPと強い相関を有したことから, 血圧や体液量を反映すると考えられた.

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