日本透析医学会雑誌
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慢性血液透析患者における腰椎骨密度および血中骨代謝パラメーター測定の臨床的意義
quantitative computed tomography (QCT) 法による海綿骨と皮質骨の分離測定
佐藤 元昭寺山 百合子高橋 信好二川原 和男鈴木 唯司
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1997 年 30 巻 7 号 p. 975-983

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抄録

慢性腎不全患者の長期生存例の増加に伴い, 患者のQOLに関わる合併症が注目されており, その一つが腎性骨異栄養症である. そこで, quantitative computed tomography (QCT) 法にて血液透析 (HD) 患者の腰椎骨密度を測定し, さらに数種の血中骨代謝パラメーターを測定し, その意義および関連性につき検討した.
対象は, 23-60歳の男性HD患者74例 (HD群) で, 19-69歳の健常男性31例を対照群とした. 骨密度は, QCT法にて第2-第4腰椎 (L2-L4) の海綿骨および皮質骨に分けて測定した. 血中骨代謝パラメーターは, 骨密度測定と同時期に, カルシウム (Ca), 無機リン (Pi), インタクト副甲状腺ホルモン (i-PTH), オステオカルシン (BGP), 骨型アルカリフォスファターゼ (B-ALP), および酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ (TRACP) を測定した.
対照群およびHD群の海綿骨骨密度は加齢とともに低下したが, 皮質骨骨密度は年齢とは相関せず, HD歴と負の相関を示した. また, 対照群の海綿骨骨密度と皮質骨骨密度間には相関性を認めなかったが, HD群では正の相関を示した. HD群のPi, i-PTHおよびBGPは対照群に比して著明高値を示したが, B-ALPおよびTRACPには差を認めなかった. HD群の骨代謝パラメーター間の相関性は, 相互に良好な正の相関を認めた. 海綿骨骨密度と各パラメーターとは関連性を認めなかったが, 皮質骨骨密度は負の相関を示した. 以上より, HD患者の骨のリモデリングは比較的保たれていること, 骨代謝回転にはPTHが強く影響していることが示唆された. ただし, 加齢, HD期間, PTHおよびD3に対する反応性は海綿骨と皮質骨とで相違が認められ, 特に皮質骨骨密度と骨代謝パラメーターとが負の相関を示したことから, QCT法による海綿骨と皮質骨骨密度の分離測定は骨の評価に有用であると思われた.

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