日本透析医学会雑誌
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上腸間膜静脈-下大静脈短絡によるchronic portal-systemic shunt encephalopathyを呈した慢性血液透析患者の1例
吉光 隆博平方 秀樹金井 英俊久保 充明石田 伊都子安藤 高志吉田 鉄彦辻 博黒岩 俊郎藤見 惺奥田 誠也藤島 正敏
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1997 年 30 巻 7 号 p. 999-1005

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抄録

上腸間膜静脈, 卵巣静脈を介しての門脈-大循環短絡により高アンモニア血症を生じた慢性血液透析患者を経験した. 症例は43歳, 女性. 主訴は意識障害, せん妄. 1983年に末期腎不全で血液透析に導入. 1993年に原因不明の汎発性腹膜炎のため人工肛門の造設および腹壁ヘルニア根治術を行った. 1995年1月頃より傾眠傾向, 家族の名前を忘れる, 理由もなく興奮するなどの症状が出現し増悪するため3月14日当科に入院した. 神経学的検査では, 意識レベルはJapan Coma Scaleで1点であり, 羽ばたき振戦を認めた. 血液生化学検査ではGOT, GPT, 総ビリルビン値は正常であったが, 血中アンモニア値は424μg/dlと上昇していた. 肝炎ウイルスマーカーは陰性で, 肝生検組織にも肝障害の所見は認められなかった. 脳波では両側性の徐波を認めた. 頭部MRIでは, T1強調画像で, 淡蒼球に対称性に高信号域を認めた. 上腸間膜動脈造影で上腸間膜静脈より下大静脈への短絡路を認め, 同部へ塞栓術を施行した. 塞栓術後, 血中アンモニアは正常化し, 意識障害も改善した.

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© 社団法人 日本透析医学会
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