末期腎不全の維持透析中に高度の心嚢液貯留をきたし, 1例は救命できたが, 他の1例は救命できなかった2症例を報告する. 症例1は61歳男性. 慢性腎不全で透析歴5年. 平成6年4月より非透析日に呼吸困難感が出現. 11月より胸部圧迫感も出現するようになったため, 同28日入院. 入院時に心膜摩擦音を聴取し, 血液検査で炎症所見の亢進, 心エコー図上中等量の心嚢液貯留を確認し, 尿毒症性心外膜炎と診断した. 4日間の連日透析を施行したが, 入院5日目の心エコー図では心嚢液貯留が増強し, 翌日になって突然心停止をきたし, 緊急心嚢穿刺を含む心肺蘇生術を施行したが救命できなかった. 症例2は66歳女性. 慢性腎炎から腎不全に移行し平成7年6月から血液透析を導入. 同年8月6日に突然呼吸困難が出現し, 緊急入院となった. 入院時は昏睡, 呼吸停止, 心原性ショック状態であった. 炎症所見の亢進, 胸部X線上高度の肺うっ血, 心エコー図上中等量の心嚢液貯留を認めたため, 尿毒性心外膜炎およびうっ血性心不全と診断. 心肺蘇生術と緊急透析で改善したが, 心嚢液の減少はみられなかった. 入院16日目に再び急性心不全を発症し, 心エコー図上で心嚢液の増加と右室の拡張期虚脱像を認めたため, 心タンポナーデと診断した. 心嚢穿刺およびドレナージ術を施行したところ, 循環動態は安定し, 以降の再発は認めなかった.
心外膜炎は末期腎不全や維持透析中の患者においては頻度が高く, 心タンポナーデをはじめとする致死的循環器合併症の発症も多い. 心エコー図による心嚢液貯留の半定量化や右房右室の拡張期陥入や虚脱像は本症の生命予後を決定する重要な所見で, 心嚢穿刺等の侵襲的治療に踏み切ることが重要である.