抄録
症例: 66歳女性. 1967年子宮全摘除. 1987年血液透析導入. 1996年7月下旬頃より右腰部痛, 下腹部痛, 発熱を認め, 腹部CTで右腎に腫瘤性病変を指摘され7月30日当科入院となった. 尿閉, 尿路感染を認め, 抗生物質投与および間歇導尿・膀胱洗浄を続け全身状態の改善を待って右腎摘出術を予定していたが, 8月8日38℃を超える発熱を認めたため膿腎症の診断で経皮的腎瘻術施行. 腎瘻術後は解熱傾向となり全身状態も改善した. 本症例は子宮全摘除術の合併症として神経因性膀胱を生じ, 尿閉, 尿路感染症を合併し, 腎盂腎炎, 膿腎症へと進展したと考えられた.
長期透析患者での発熱の原因として尿路感染症を見逃してはならず, また膿腎症を発症した場合には, 経皮的腎瘻術による尿ドレナージを完全に行えば保存的に治療可能と考えられた.