抄録
1989年8月から1997年5月の間に熊本中央病院腎臓科で施行されたブラッドアクセスを目的とした自家静脈移植術39例 (手術回数40回) の原疾患, 開存率, 合併症等について検討した. 年齢は26-84歳 (平均61歳), 原疾患はDM17例, CGN7例, 膠原病4例, その他11例であった. 1997年5月現在, 生存は21例, 死亡は18例. 生存例の開存期間は0-62か月 (平均22か月), 死亡例の開存期間は0-49か月 (平均11か月) である. 原疾患は糖尿病性腎症が最も多かった. 開存率は1年56%, 2年52%, 5年21%であり, 1年以内に死亡した13症例を除く26症例の開存率は1年100%, 2年85%, 5年35%であった. 最長開存例は62か月であった. 症例によっては血管造影を行い, 完全に閉塞する前に狭窄部に対するPTAなどの処置が長期開存のために有効な場合があると考えられた. 人工血管移植例と比べると開存率はやや劣るもののシャント感染などの合併症が少なく, 止血を含めた維持管理が容易である.