日本透析医学会雑誌
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慢性血液透析息者の予後とACE遺伝子多型性の関連
太尾 泰雄石光 俊彦小川 吉一寺西 恵松岡 博昭
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1999 年 32 巻 6 号 p. 997-1003

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抄録

218例の維持透析患者において, アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 遺伝子多型性の面から1年間にわたる予後追跡調査を行った. 対象とした透析患者のACE遺伝子型はII型42%, ID型43%, DD型15%と, I alleleの頻度 (0.64) に比べD alleleの頻度 (0.36) が少ない分布を示した. 登録時に年齢, 性, 原疾患や循環器合併症などの背景因子には3群間で違いはみられなかったが, 血清ACE活性はDD群で有意に高値であった (II9.6±0.6, ID 12.8±0.6, DD 16.2±1.5U/l; p<0.001). 1年間の追跡調査期間中に24例 (11.0%) が死亡し, 高年齢 (p<0.001), 男性 (p<0.03), 非飲酒 (p<0.001), 心胸郭比高値 (p<0.02), 血清Na濃度低値 (p<0.03), 血漿AngII濃度高値 (p<0.003) などの因子が生命予後と有意な関係を示した. 各ACE遺伝子型群で死亡率に有意な差はなかったが, 致死的および非致死的な心血管疾患の発症率はDD型 (15.2%) においてII型 (3.3%) やID型 (6.5%) よりも有意に高値であった (p<0.03), ACE遺伝子多型のDD型は, 慢性維持透析患者において, 心血管疾患の危険因子である可能性が示唆された.

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