末期腎不全患者の合併症なき円滑な透析導入もまた腎臓専門医の責務のひとつである. 今回私たちは腎不全診療開始時期から透析導入までの期間が及ぼす医学的ならびに経済的側面への影響について検討した.
1994年から1997年まで当院にて新規に血液透析を導入した全120名を対象として 1) Early群 (n=38): 透析導入1年前以前の腎臓専門医への紹介診療開始群 2) Intermediate群 (n=41): 透析導入1か月前以前, 1年未満の紹介診療開始群 3) Late群 (n=41): 透析導入前1か月未満の紹介診療開始群, の3群に分けて患者背景, 初診時および導入時のBUN, 血清creatinine値, 導入時の平均在院日数と一日平均医療費, 内シャントの有無, 初回透析での除水量につき検討した.
その結果3群間ではLate群で在院日数が有意に長く (Late: 47日, Intermediate群: 29日, Early群: 31日), 一日当たりの医療費が有意に高額であった (Late群: 46212円, Intermediate群: 38558円, Early群: 37927円). また初回透析時にすでに内シャントのある患者はEarly, Intermediate群で80%以上, Late群では39%であった. 初回透析の平均除水量は, Early群で1.18kg, Intermediate群で1.34kg, Late群では2.0kgと段階的に増加した. 導入時の血清creatinine値には各群で差異はなかったが, BUNはEarly群からLate群へと有意に増加した.
したがってより早期, 少なくともIntermediate群に相当する初診時期 (血清creatinine 5.9mg/dl) までの腎不全診療の開始は, その後の透析導入を医学的にも医療経済側面からも容易にさせ得ると考えられた.