日本透析医学会雑誌
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血液透析患者の鉄欠乏の指標としての血清トランスフェリンレセプターの臨床評価
水口 隆衣笠 えり子鈴木 正司秋澤 忠男斎藤 明血清トランスフェリンレセプター研究会
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2000 年 33 巻 10 号 p. 1313-1320

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抄録

recombinant human erythropoietin (rHuEpo) 投与中の血液透析 (HD) 患者における鉄欠乏の指標としての血清トランスフェリンレセプター (sTfR) 値の有用性を多施設共同研究で検討した.
対象はrHuEpo投与中の維持期HD患者で, 過去3か月以上rHuEpo投与量の変更や鉄剤の投与がなく, 他の血球減少症, 炎症性疾患, 溶血性疾患, 高度の副甲状腺機能充進症や肝機能異常の合併がなく, 鉄欠乏が疑われた80例に対して静注用鉄剤を投与し, 投与前後に血液学的検査, 鉄動態検査, 血液生化学検査およびsTfR値を測定した. 鉄剤の効果判定は, 鉄剤投与前Ht値と投与2-8週後の最大Ht値どの差をΔHtとし, ΔHt値3%以上を鉄剤有効例, 3%未満を無効例とした.
鉄剤有効例 (n=43) は無効例 (n=37) に比してsTfR値 (1078±253 vs 917±241ng/ml, p<0.005), sTfR/Hb値 (11.1±3.2 vs 8.8±2.2μg/g, p<0.0005) と有意に高値で, 血清フェリチン (sFt) 値 (58±25 vs 82±36ng/ml, p<0.001) と有意に低値であったが, トランスフェリン鉄飽和率 (Fe-Sat) や網状赤血球数および網状赤血球比率には差はなかった. また, ΔHt値はsTfR, sFt, Fe-Sat値に比してsTfR/Hb値と最も良い相関性を示した (r=0.672).
鉄欠乏診断の診断効率は, sTfR/Hb (cut off 10μg/g) が67.5%と最も高く, sTfR (1000ng/ml), sFt (50ng/ml), sFt (100ng/ml), Fe-Sat (20%) の順であった.
sTfR/Hb値はrHuEpo投与中のHD患者の鉄欠乏に対する鉄剤投与の必要性を判断する上で最も良い指標になると考えられる.

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