日本透析医学会雑誌
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血液透析前後の尿素窒素値による蛋白異化率測定の試み
原 道顕
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2000 年 33 巻 5 号 p. 347-352

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抄録

安定した状態にある週3回の維持透析患者における蛋白異化率 (PCR) を, 週第1回目の透析前後の尿素窒素 (BUN) 値より測定する方法について検討した. 1コンパートメントモデルにおいて, 以下の条件を設定した. (1) 安定した状態では1週間のBUNの変化パターンは一定であり, 次週第1回目の透析前BUNは週第1回目の透析前BUNと一致する. (3) 尿素は透析間のみで産生され, 透析中の尿素産生は無視し得る. (3) 尿素産生速度 (Gu) は一定である. (4) 除水に伴う透析効率は無視し得る. (5) 残存腎機能は0とする. (6) 透析条件が変わらなければ除去率は各透析で一定である. (7) 尿素スペースは透析および透析間で一定であり, 基礎体重の60%である. 以上よりGuを求めると以下の式となる. Gu=(C1-K2×C2)×BW/[{K2×(48-T)+K×(48-T)+(72-T)}×10]
ただし, 週第1回目の透析前BUNをC1(mg/dl), 透析後BUNをC2(mg/dl), K=C2/C1, 基礎体重をBW (kg), 透析時間をT (時間) とする. GuよりPCRはPCR=(Gu+1.2)×9.35の式で求められる.
安定期の慢性腎不全患者51例について, 上記の式で計算したPCR計算値と, 週第1回目の透析後BUNと次回透析前BUNより測定したPCR実測値との相関を求めた. 両者の間には, PCR計算値=3.041+0.9071×PCR実測値: (N=234, R=0.8672, p<0.0001) と良好な相関関係が得られた.
以上より今回報告したPCR計算法は, 体重増加の多い症例や透析前BUNの変動が大きい症例で誤差がみられるものの, 安定した状態ではPCRを測定する簡便な方法と考えられた.

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