抄録
KDQOL, 自己決定尺度および自己効力を用いて記名方式で患者情報を得, どのような患者背景がこれらのスコアーに影響を与えるかを検討し, 個々の患者支援援助に利用できるか否かについて考察を行った.
対象は厚木クリニック外来血液透析患者52例とした. 平均年齢は59.8±11.4歳で平均透析歴は6.2±6.2年とした.
性差の比較で社会的支援, 睡眠, 身体的機能で男性のほうが良好, 昼間と夜間透析の比較で夜間透析患者のほうが生きることの自己決定と社会的支援で良好, 透析歴による比較で5年以上で身体的機能と痛みについて不良であった. 就労状況では無職の群がすべての項目で低値傾向, 家族構成では一人暮らしの群が全体的健康観および食事に関する自己効力で低値傾向であった. 腸穿孔の手術のための入院症例では, 入院前と入院治療後外来通院時での比較ではKDQOLにおいて1標準偏差を越える大きな変化が認められた.
これらの測定尺度による情報は医療者と患者側での認識の差を埋めるのに有用であり, 患者の精神, 肉体, 社会状況を客観的に把握し各種専門医療職間での連携を行う上で有用な指標になる可能性があると思われた.