日本透析医学会雑誌
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栄養指導は透析患者の栄養状態を改善することができる
PCR, Kt/V, TAC-urea, Alb, TPを用いた栄養管理の試み-第4回日本透析医学会コメディカルスタッフ研究助成報告-
杉本 美貴具志堅 夏子兵藤 透
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キーワード: 栄養指導
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2000 年 33 巻 5 号 p. 361-367

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抄録

透析患者の低栄養状態は生命予後に大きく影響を与える因子である. 栄養指導を中心に日々患者に接してきた我々栄養士の立場としてどの程度栄養指導そのものが栄養状態改善に有用性があるのかを食事調査記録のみでなくより正確な方法で知りたいところであった. そこで我々は本研究にて, 最近使用できるようになったurea kineticsの手法を用いて栄養指導の有用性を検証したので報告する.
対象は観察期間中安定した体調を維持しえた一日尿量500ml未満の週3回血液透析を受けている患者31例 (糖尿病5例, 非糖尿病26例, 男性15例, 女性16例) とした. 平均年齢59.8±12.0歳, 平均透析歴8.1±5.6年であった. これらの患者の中でKt/V 1.3未満の患者14例および希望者4例に透析量を増加した. 透析量を不変とした群は, 13例であった.
方法は観察期間を食事指導前3か月間 (期間A), 毎月の食事指導を行った3か月間 (期間B), 毎月の食事指導+透析量増加を行った3か月間 (期間C) とした. 各期間の前後でPCR, TAC-urea, Kt/V, 血清Alb, 総蛋白 (TP), 総コレステロール (T-cho) を測定した. これらの指標をもとに各期間での栄養状態の評価を行い栄養指導および透析量増加が栄養状態改善に有効であるかどうかを検討した. 栄養指導は, 蛋白摂取量は最低1.2g/Kg/day, 必要摂取カロリー数は最低35Kcal/Kg/dayで指導した.
体重は透析量増加群で有意に各期間を通じて大きかった (52.6±10.9 v.s. 45.5±6.4Kg). Kt/Vは不変群で有意に高値であった. Albは不変群で期間Aに比し期間BとCで有意に上昇した. TPは両群で同じく期間BとCで有意に上昇した. しかしながら, 両群において期間BとCの間ではAlbもTPも有意差は認められなかった.
栄養指導はそれ自体単独で血液透析患者の栄養状態を改善すると考えられた. 特に栄養状態が中等度かもしくは比較的良好で体重が軽く十分な透析が行われている患者でより有効と思われた.

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