抄録
原発性巣状糸球体硬化症 (FSGS) の組織学的バリアントのひとつであるcellular lesionを, 病初期高度に認めた男児例に対して, LDL吸着療法を行い完全寛解が得られたので報告する. 症例は全身性の浮腫で発症し, ネフローゼ症候群を呈した11歳男児で, 腎生検にて原発性FSGS cellular variantと診断した. 経過中ステロイド抵抗性を示したため, LDL吸着療法を開始したところ完全寛解が得られた.
FSGS cellular variantは典型的FSGSと比較して, 腎機能予後は明らかに不良とされている. しかし一方では, 寛解が得られた場合, その予後は良好であったと報告されている. そのためFSGS cellular variantに対する治療上, 寛解を目指して適切な治療を行うことが重要であるが, 本症例の経験より, LDL吸着療法を早期から積極的に実施する意義は大きいと考えられた.