日本透析医学会雑誌
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腎移植後に発症した硬化性被嚢性腹膜炎の1手術例
則行 敏生川西 秀樹山根 修治新原 亮福馬 寿幸松本 富夫森石 みさき崎久保 悦夫原田 欣子川合 徹高橋 俊介土谷 晋一郎
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2001 年 34 巻 11 号 p. 1435-1439

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抄録

我々は死体腎移植後に発症した硬化性被嚢性腹膜炎 (SEP) 症例に外科治療を行い, 良好な結果を得たので文献的考察を加え報告する. 症例は42歳男性で, ネフローゼ症候群慢性腎不全のため平成4年6月にCAPD導入, 平成5年および平成9年に腹膜炎の既往があった. 平成11年1月死体腎移植を受けたが, 平成11年7月頃より腹部違和感が出現し, 平成12年4月SEPと診断された. 絶飲食, 中心静脈栄養 (TPN) による管理を受けるも軽快せず, 平成12年6月8日SEPに対する手術目的で当科入院となった. 手術所見は淡緑色の軽度混濁した腹水と空腸, 回腸にそれぞれに白色調の光沢のある線維性膜様物に覆われ一塊となった部位を認め, 後腹膜の肥厚とS状結腸は線維性被膜に覆われていた. 小腸を覆う線維性膜様物を腸管壁全周かつ全腸管にわたり剥離した. S状結腸を覆う線維性膜様物を切開し, S状結腸の剥離を行った. 腹側, 臓側腹膜の病理組織学的所見は腹膜線維症と慢性腹膜炎の所見であった. 術後管理では, プレドニン, シクロスポリンの静脈内投与で免疫抑制療法を施行し, 術後第27病日に軽快退院となった. 現在, 腎移植後SEPの報告は少ないが, 今後CAPD患者に対する腎移植後症例の増加に伴い同様な症例も認められると考えられ, 慎重な周術期管理を計画したうえでの手術治療も治療法の選択に加える必要がある.

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