日本透析医学会雑誌
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34 巻, 11 号
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  • 佐藤 滋, 水戸部 陽子, 小林 浩悦, 飯沼 昌宏, 柿沼 秀秋, 三森 健二, 三品 睦輝, 下田 直威, 佐藤 一成, 羽渕 友則, ...
    2001 年 34 巻 11 号 p. 1409-1413
    発行日: 2001/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    エンドトキシン (ET) 除去フィルターの長期使用によるET除去能の変化は不明な点が多い. そこでコンソール用ET除去フィルター2種類を16か月間使用し, ET除去能の変化を比較するとともに, その相違を電子顕微鏡観察から検討した. ダイアライザー直前の透析回路に, いずれも膜素材がポリスルフォン (PS) のニプロCF-609, 東レTET-1.0のいずれかを設置した. 透析液が供給されてから10分後に, フィルター前後のサンプルポートから透析液を採取し, ET濃度をフィルター設置直後, 6, 10, 16か月後に測定した. ET濃度測定は比濁時間分析法を用いた. また使用前と使用16か月後にフィルター膜表面を電子顕微鏡で観察した. 観察期間中, CF-609を通過した透析液中のET濃度はいずれも測定感度以下であり, 使用時間も最長1656時間に及んだ. 一方TET-1.0は3本中2本で, 6か月後にはET濃度が測定限度以上になった. これは使用時間にして600時間程度で発生した. 膜微細構造はTET-1.0に直径1μmの穴が膜全体に存在し, 使用後はCF-609の膜表面に多くの付着物が観察された. またすべてのフィルターにPseudomonas属が検出された. 2種類のフィルターの長期ET除去能は異なったが, 両フィルターとも16か月間装着し, 使用時間が1600時間を越えても, 完全基準を維持したET除去が可能であった. 特にCF-609は16か月, 1600時間以上使用してもET濃度は測定感度以下を維持していた. この差は膜の分画分子量や微細構造の相違による可能性があると思われた.
  • 森田 研, 石原 邦洋, 榎並 宣裕, 高橋 達郎, 伊丹 儀友, 大平 整爾
    2001 年 34 巻 11 号 p. 1415-1419
    発行日: 2001/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性. 慢性糸球体腎炎にて血液透析を3.5年施行中, 定期検査のCTにて両側腎に小径腫瘍を1個ずつ認めた. 遠隔転移を認めず, ハンドアシスト腹腔鏡下両側腎摘出術を施行した.
    長さ7.5cmの腹部正中切開を臍上部におき, 患側と同側の術者手を挿入し, 計5本の腹腔鏡ポートをおき, 左から両側腎を経腹的に摘出した. 腎は上極以外Gerotaの脂肪を十分付けたまま剥離し, 血管・尿管は腹腔鏡ポートより切断した. 手術時間は346分で, 出血量は微量, 術中自己血を200ml使用したのみで, 術後合併症を認めなかった.
    ハンドアシスト手術は, 摘出物の十分な病理学的検討ができる一方, 術中不感蒸泄や術後回復の面で腹腔鏡単独手術と同等な効果が得られ, 術野にタオル・手術器械などの持ち込みが自由であり, 摘出場所に因らない自由な皮膚切開を選択でき, 維持透析患者に対する低侵襲手術として今後適応症例の増加が見込まれる手術方法であると考えられた.
  • 兵藤 透, 平良 隆保, 山本 スミ子, 吉田 一成, 内田 豊昭, 遠藤 忠雄, 酒井 糾, 馬場 志郎
    2001 年 34 巻 11 号 p. 1421-1426
    発行日: 2001/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は血液透析患者の勃起機能を評価し, また, クエン酸シルデナフィルの投与を試みた. さらに2001年1月1日現在での世界における透析患者に対するクエン酸シルデナフィル投与の治療効果に関し, 文献的解析を行った.
    クエン酸シルデナフィル服用希望の8例 [糖尿病: 5例, 非糖尿病: 3例, 平均年齢53.3±8.6歳 (糖尿病例: 53.4±10.7歳, 非糖尿病例: 53.0m±5.2歳, 平均透析歴2.9±3.1年 (糖尿病例: 2.8±1.8年, 非糖尿病例: 3.0±5.2年)] に対し, 国際勃起機能スコアー5 (IIEF5) を用いて勃起機能の診断を行ったところ, 平均スコアーは全体で6.1±4.7点, 糖尿病例6.4±4.8点, 非糖尿病例5.7±5.5点であった. この中で2例の症例がクエン酸シルデナフィルを服用した. 症例1は53歳透析歴3年, 原疾患は糖尿病, クエン酸シルデナフィル50mg服用でスコアーは11点から22点となり勃起不全 (ED) の状態から解放された. 症例2は56歳, 透析歴1年未満, 原疾患は慢性糸球体腎炎, クエン酸シルデナフィル25mg服用直後から顔面紅潮および心室性不整脈が生じ継続服用を断念した.
    2001年1月1日現在における透析患者へのクエン酸シルデナフィル投与を文献的に検索し効果および副作用について自験例を含め検討したところ106例に投与され, 効果についての記載のあった96例中71例において有効 (有効率74.0%), 副作用は6例に認められ, 顔面紅潮, 頭痛が主なものであったが, 自験例においてLown等級分類IIに相当する心室性不整脈が認められた.
    クエン酸シルデナフィルは透析患者のEDに対しても有効であると推測されるが安全性を含めてさらに症例数を重ねて検討する必要があると思われた.
  • 満永 幹雄, 内田 發三, 長尾 俊彦, 内海 義己, 前川 純子, 木下 敦恵, 橋本 和生, 古正 智道, 杉山 誠子, 林 一彦
    2001 年 34 巻 11 号 p. 1427-1433
    発行日: 2001/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性. 1991年4月 (69歳) より心肥大, 慢性肝炎, 慢性腎不全などにて当院へ通院開始. 1992年末, 右上腕に皮下結節出現. 1993年6月, 血液透析導入に至ったが, 右上腕皮膚の疼痛, 皮下石灰化に伴う変形, 色素沈着, 潰瘍が出現し徐々に進行. 半年後に左上腕に皮下石灰化が出現. 1994年9月には洞不全をきたし, ペースメーカーが植え込まれた. 1995年, 両大腿前面皮下に小石灰化病変が出現. 1997年9月に腰痛などで入院した. 入院時所見で両側上腕皮下に塊状, 板状の石灰化 (tumoral calcinosis) が認められ, 右上腕皮膚に石灰化部分が露出した潰瘍がみられた. 潰瘍部の生検では真皮の小血管周囲に炎症細胞浸潤あり, 膠原線維の著明な増生がみられ, 数箇所に石灰化病変が認められたが, 脂肪織に炎症はみられなかった. 石灰化部分の分析ではリン酸カルシウム51%, 炭酸カルシウム49%であった. 血中intact PTH (i-PTH) は140pg/mlと高く, またCa 9.0mg/dl, P 8.5mg/dl (Ca×P 76.5) と多めであった. 1992年からの石灰化病変はi-PTHやCa×Pが上昇しているときに悪化する傾向にあった. 1999年11月に肝癌を併発し, そのため2000年5月に死亡した. 剖検の結果, 肝癌およびそれによる腹腔内癌腫症, 多発性食道びらんに加え, 左心室僧帽弁直下の後壁に直径約15×20mmの灰白色腫瘤 (calcified amorphous tumor) を認めた. 成分分析の結果, リン酸カルシウム67%, 炭酸カルシウム33%であった. 透析患者に合併した四肢近位部の皮膚潰瘍を伴ったtumoral calcinosisと左心室のcalcified amorphous tumorはまれと考えられ, その成因について若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 則行 敏生, 川西 秀樹, 山根 修治, 新原 亮, 福馬 寿幸, 松本 富夫, 森石 みさき, 崎久保 悦夫, 原田 欣子, 川合 徹, ...
    2001 年 34 巻 11 号 p. 1435-1439
    発行日: 2001/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は死体腎移植後に発症した硬化性被嚢性腹膜炎 (SEP) 症例に外科治療を行い, 良好な結果を得たので文献的考察を加え報告する. 症例は42歳男性で, ネフローゼ症候群慢性腎不全のため平成4年6月にCAPD導入, 平成5年および平成9年に腹膜炎の既往があった. 平成11年1月死体腎移植を受けたが, 平成11年7月頃より腹部違和感が出現し, 平成12年4月SEPと診断された. 絶飲食, 中心静脈栄養 (TPN) による管理を受けるも軽快せず, 平成12年6月8日SEPに対する手術目的で当科入院となった. 手術所見は淡緑色の軽度混濁した腹水と空腸, 回腸にそれぞれに白色調の光沢のある線維性膜様物に覆われ一塊となった部位を認め, 後腹膜の肥厚とS状結腸は線維性被膜に覆われていた. 小腸を覆う線維性膜様物を腸管壁全周かつ全腸管にわたり剥離した. S状結腸を覆う線維性膜様物を切開し, S状結腸の剥離を行った. 腹側, 臓側腹膜の病理組織学的所見は腹膜線維症と慢性腹膜炎の所見であった. 術後管理では, プレドニン, シクロスポリンの静脈内投与で免疫抑制療法を施行し, 術後第27病日に軽快退院となった. 現在, 腎移植後SEPの報告は少ないが, 今後CAPD患者に対する腎移植後症例の増加に伴い同様な症例も認められると考えられ, 慎重な周術期管理を計画したうえでの手術治療も治療法の選択に加える必要がある.
  • 西浦 亮介, 戸倉 健, 上園 繁弘, 木下 浩, 久永 修一, 藤元 昭一, 江藤 胤尚
    2001 年 34 巻 11 号 p. 1441-1445
    発行日: 2001/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は, 1995年1月より維持血液透析中の64歳, 男性 (原疾患: 腎硬化症). 1998年2月より嗄声が出現し, 胸部X線写真で左第1弓の突出を認め, 当科に入院した. 弓部大動脈瘤の診断で4月21日に弓部大動脈瘤置換術を施行された. 術後7日目に術創部より排膿を認め, 縦隔洞炎と診断された. 抗生剤投与とドレナージにて軽快し, 外来維持透析へ移行した. 同年11月頃より腰痛が出現し, 12月中旬より発熱, 胸部違和感, 腰痛の増強 (歩行困難) のため, 当科に緊急入院した. WBC 13,100/mm3, CRP 20.3mg/dl, 血液培養にて黄色ブドウ球菌を検出し, 腰部MRIにてL 2/3の椎間板炎, 脊椎炎の所見を認めた. また, 同時に弓部大動脈瘤置換部周囲に造影効果の乏しい腫瘤像を認め, 大動脈置換グラフト感染に伴う縦隔炎と診断した. 外科的な処置はリスクが高いため, 薬剤感受性を参考に抗生剤を継続投与し, 自他覚所見および画像所見の改善を得た. 本例の感染源の特定はできなかったが (術後の持続感染, シャント穿刺時の感染等), 透析患者の易感染性を考える上で興味ある症例と考え, 報告する.
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