日本透析医学会雑誌
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二次性副甲状腺機能亢進症による両側同時大腿四頭筋腱断裂を発症した1例 種々の合併症を克服し社会復帰している1症例について
松本 和将横田 眞二海老名 千香子金子 一也笠井 謙和吉田 一成岩淵 啓一馬場 志郎
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2001 年 34 巻 2 号 p. 137-141

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抄録

症例は26歳, 男性. 主訴は突然の両膝, 大腿部痛. 既往歴として8歳時, 巣状糸球体硬化症によるステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と診断され, 11歳時より腹膜透析 (CAPD) 施行. 透析開始後12年目にイレウス症状が著明となり, 硬化性被嚢性腹膜炎 (SEP) の診断のもと血液透析へと移行した. その後充分な経口摂取が得られず, 在宅中心静脈栄養療法 (HPN) にて栄養管理をしていた. 長期HPNに伴うセレン欠乏症からの拡張型心筋症をも合併したが社会復帰しており, 相模台病院腎センターにて外来維持透析をしていた. 1999年1月26日, 排便のため着座したところ突然の両膝, 大腿部痛が出現, 歩行困難となり当院緊急入院となる. Ca, Pは正常範囲内であったが, ALP, i-PTH, β2-MGの異常高値を認めた. 大腿部超音波検査, MRIにて両側大腿四頭筋腱断裂と診断し, 2月2日両側大腿四頭筋腱縫合術を施行した. 術中所見では両側とも大腿筋腱は膝蓋骨挿入部で断裂しており一部剥離骨折片が付着していた. 両側腱の病理所見は線維性結合組織, 滑膜等にフィブリンの析出, 軽度の炎症変化と腱内に仮骨を認め, Congo-redやβ2-MGによる特殊染色は陰性であった. 本症例は主に2°HPTに起因すると考えられる大腿四頭筋腱断裂であったが, 長期透析やHPNによる特殊な栄養状態も関与している可能性も考えられた.

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