日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
激烈な高ビリルビン血症, 急性腎不全を呈し, ビリルビン吸着と血液透析により救命できたワイル病の1症例
大橋 禎子内藤 順代窪田 研二
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 35 巻 4 号 p. 249-253

詳細
抄録

症例は55歳の男性, 農夫であり, 藁作業中にネズミと接触する機会があった. 1999年10月に発熱, 黄疸を主訴に当科受診, 腎前性急性腎不全も合併していたため入院となる. 入院後, 悪寒戦慄を伴う40℃の発熱, 眼球結膜の充血, 腓腹筋痛といった特徴的な臨床症状, またネズミと接触した可能性よりワイル病を疑い, 直ちにベンジルペニシリンカリウム (PCG) 600万単位/日の投与を行った. 腎機能は, 充分な輸液にもかかわらず急速に悪化したため血液透析療法を開始した. また黄疸もT-Bil値で42.7mg/dLまで増悪したため, ビリルビン吸着療法を計2回併用した. その後, 炎症所見の正常化に伴い腎不全・黄疸とも徐々に回復した. 発熱や筋肉痛などの諸症状も改善し, 第21病日にはPCGを中止, 結局血液透析療法は計14回で離脱した. その後, 入院後14日目の尿培養よりレプトスピラが検出され, ワイル病と確定診断した.
ワイル病は早期治療が予後を左右し, 治療開始が遅れると致死的となる, 本症例は重症型レプトスピラ症であったが, 早期に本疾患を疑い, 適切な治療を行うことで順調な経過をたどったと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top