日本透析医学会雑誌
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透析用カテーテルが胸水貯留の原因と考えられた1例
加藤 規利岡田 理恵子市田 静憲湯澤 由紀夫
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2004 年 37 巻 10 号 p. 1909-1913

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抄録

透析用ダブルルーメンカテーテルの右内頸静脈への長期留置が, 同側の胸水貯留の原因と考えられた症例を経験した. 症例は45歳男性, 10年前より糖尿病を指摘されており通院中, 急激な全身の浮腫が著明となり入院. 10g/日以上の高度蛋白尿および, 全身の浮腫と重度の低蛋白血症を伴ったネフローゼ症候群をきたしており, 腎生検組織型は糖尿病性腎症と膜性腎症の合併を認めた. 保存的な治療法に反応が乏しく心不全傾向が出現してきたため, 右内頸静脈にダブルルーメンカテーテルを留置しECUMを開始, 徐々に腎機能も増悪し血液透析へと移行した. シャントの作成が困難で, 長期間の右内頸静脈へのダブルルーメンカテーテル留置を余儀なくされた. カテーテル交換は随時施行していたが, 留置後45日目より急激な右胸水, 右頸部, 顔面の浮腫が出現した. 胸水は漏出性であり, トロッカーから, 一日1,500mL以上の胸水が流出した. 右内頸静脈からのDSAから, 右静脈角の狭窄の存在を確認した. カテーテル抜去後, 胸水および浮腫は速やかに消失した.
本症例における胸水貯留の機序は, 右内頸静脈カテーテル存在下における右リンパ本幹の静脈角での閉塞により, 気管支縦隔リンパ本幹, 鎖骨下りンパ本幹, 頸リンパ本幹の静脈系への流入路が絶たれた可能性が考えられた.

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