日本透析医学会雑誌
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血液透析患者にみられた紫色尿バッグ症候群の1例
山本 貴敏澁谷 浩二井上 聖士西岡 正登新光 聡子土橋 正樹藤田 嘉一
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2004 年 37 巻 3 号 p. 253-256

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抄録

症例は74歳男性, 1976年に糖尿病と診断され, 1992年よりインスリン治療を受けていた. 1994年より糖尿病性神経因性膀胱による排尿困難, 反復性尿路感染症をきたし, このため両側尿管狭窄となり1995年, 両側尿管にはステントを, 膀胱内には導尿カテーテルを挿入された. 1997年より糖尿病性腎症による慢性腎不全悪化のため当院にて血液透析に導入され, その後週2-3回外来血液透析療法を行っていた. 反復性尿路感染, 血糖コントロール不良, 血尿などで入退院を繰り返していた. 1998年3月12日, 低血糖発作にて当院入院. 入院後3月31日に尿管ステントの入れ替えを行ったが, その後4月8日採尿バッグおよびランニングチューブが青紫色に変色しているのが発見された. 尿沈渣で多数の白血球を認め, 尿培養でStaphylococcus aureus, Enterococcus faecalisを認め, 紫色尿バッグ症候群 (purple urine bag syndrome: 以下PUBSと略す) と診断した. 抗生物質の経静脈的投与 (ペントシリン: PIPC 1.0g/日) と頻回の膀胱洗浄を行い, 約1週間で採尿バッグおよびランニングチューブの着色は消失した. その後, 頻回の留置カテーテル交換, 膀胱洗浄, 排便コントロールを行うことで再発しなかった. 7月11日, 脳出血で死亡した.
近年の高齢化社会と高度医療の進歩に伴いこのような現象が増加しているとはいわれているが, われわれの検索しうる限りでは本邦報告例は30数例で血液透析患者での報告は見当たらなかった.

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