日本透析医学会雑誌
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血液透析患者に合併したβ溶血性G群連鎖球菌によるtoxic shock-like syndromeの1症例
吉田 哲也大塚 泰史友成 治夫山岸 弘子町田 裕美壁谷 悠介久保 仁栗山 哲細谷 龍男
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2004 年 37 巻 8 号 p. 1651-1657

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抄録

Toxic shock-like syndrome (TSLS) は, 主としてA群のβ溶血性連鎖球菌が原因として関与する重篤で致死的な全身感染症である. TSLSは, A群溶連菌以外にもB, C, G群溶連菌が原因となるとの報告が散見される.
今回, 著者らは, 維持血液透析患者において, 全身の筋肉痛, ショック, 高熱, 高CK血症により発症し, 血液培養からG群の溶連菌を検出したTSLSを経験した. 臨床症状, 検査所見, 画像診断などから米国防疫センター (CDC) のTSLS診断基準に合致していた. 本例は, 発症当初から積極的なアンピシリン/スルバクタム, クリンダマイシンなどの抗生物質投与, およびγ-グロブリン製剤の併用に加え, 集中的な持続的血液濾過透析 (CHDF) ならびにエンドトキシン吸着などを併用して行い, 壊死組織の外科的摘除を行うことなく救命するに至った. G群溶連菌によるTSLSは, まれであり臨床病像や病因論の詳細は未だに明確ではない. また, 透析患者での報告は極めて希少である.
本症例は, 糖尿病性腎症を基礎疾患とする慢性腎不全血液透析患者に発症したG群溶連菌によるTSLSである. TSLSは, 重篤な病像を呈することが多く死亡率も高いため, 早期診断・早期治療が重要である. また, 本症例の経験から透析患者に発症した際に各種の血液浄化法の工夫により患者生命予後の改善がみられる可能性が示唆された.

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