日本透析医学会雑誌
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血液透析患者における心筋ミオシン軽鎖1の臨床的意義
渡辺 幸康斉藤 浩次矢野 新太郎三橋 秀基清水 幸博小野 久米夫野島 美久
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2005 年 38 巻 5 号 p. 1201-1210

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抄録

血液透析患者の心筋ミオシン軽鎖1 (cMLC1) の臨床的意義について検討した. 血液透析患者 (HD群): 67例, 非血液透析患者 (non HD群): 60例について, 心エコー検査で, 左室心筋重量係数 (LVMI), フォルムPWV/ABIで上腕・足首脈波伝播速度 (ba PWV), 上下肢血圧比 (ABI), 頸動脈エコーで頸動脈内膜中膜複合体 (IMT), 胸部X線から心胸郭比 (CTR), 大動脈石灰化係数 (ACI) を測定した. ついで, 血中cMLC1, 心臓脂肪酸結合蛋白 (H-FABP) および心筋トロポニンT (cTnT) 濃度を測定し, 心血管系合併症の有無, 一般検査所見, 腎機能, 左室肥大, 心機能との関係を検討するとともに, 重回帰分析およびROC解析を施行し, 虚血性心疾患 (IHD) を検出する上での有用性について検討した.
HD群ではnon HD群にくらべて, 有意にcMLC1が高く (p<0.0001), H-FABP/Cr, cTnTと有意に正の相関を示した (r=0.316, p<0.01; r=0.244, p<0.05). HD群では, IHD合併例は非合併例にくらべて, 有意にcMLC1が高かった (p<0.05). HD群のcMLC1はEF, %FSと有意に負の相関を示し (r=-0.300, p<0.05; r=-0.273, p<0.05), EF<50%の心機能低下群はEF≧50%の心機能正常群にくらべ有意に高かった (p<0.001). HD群でcMLC1は, LVMI, CTR, LVDs, LVDd, LVESV, LVEDVと有意に正の相関を示し, 重回帰分析の結果から, cMLC1はIHDに関与する有意な説明因子であった. また, HD群のcMLC1はba PWV, ACIと有意に正の相関を示し (r=0.361, p<0.01; r=0.465, p<0.0001), ba PWVを従属変数とした重回帰分析から, cMLC1, 収縮期血圧が有意な独立した説明因子であった. ROC解析の結果, HD群において, IHDを検出する上で, cMLC1はROC面積 (AUC) 0.692 (p<0.0001), 感度65.0, 特異度70.4と有意であり, IHDを検出する上で有用と考えられた (ベストカットオフ値9.7ng/mL).
このように血液透析患者では, cMLC1のカットオフ値を上方補正することによって, 虚血性心疾患, 左室機能障害, 左室肥大を評価することが可能であることが明らかとなった.

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