認知症治療研究会会誌
Online ISSN : 2435-8711
Print ISSN : 2189-2806
アルツハイマー型認知症における軸索変性に対する M ガードⓇ・メマンチン併用効果の検討
松野 晋太郎
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 8 巻 1 号 p. 51-54

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抄録
オリゴデンドロサイト(グリア細胞のひとつ)は神経細胞の軸索にミエリンを形成し記憶や 学習に重要な役割を果たしている.M ガードⓇの主成分であるヘスペリジン,ナリルチンは,未活動 の神経幹細胞の分裂を促しミエリン修復作用を有する.ドネペジル(アリセプトⓇ)では改善を認め ない近時記憶がM ガードⓇで改善する症例から,アルツハイマー型認知症の記憶障害にはミエリン損 傷が関与していると考えられる(ミエリン仮説).メマンチン(メマリーⓇ)はNMDA 受容体拮抗薬 に分類される.NMDA 受容体(N-Methyl-D-Aspartate reseptor/NMDAR)はその分布によってシナ プス内NMDAR(synaptic NMDAR/sNMDAR)とシナプス外NMDAR(extrasynaptic NMDAR/ eNMDAR)に大別される.実験的に前者は神経保護的に,後者は神経毒性的に作用する.アルツハ イマー型認知症では蓄積している異常なタンパク質によって興奮性の神経伝達物質であるグルタミン 酸が常に放出されている状態にある.ラットやマウスにおける研究では,軸索からのグルタミン酸過 剰放出によりミエリン損傷が惹起されており,低用量メマンチンはeNMDAR を阻害することで神経 毒性を抑制すると考えられる(シナプス外NMDA 受容体仮説).本論文ではミエリン修復(再ミエ リン化)作用のあるM ガードⓇとミエリン保護作用のあるメマンチン併用によるアルツハイマー型認 知症の改善効果について検討する.
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© 2022 認知症治療研究会
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