主催: 日本デジタル教科書学会
後援: 文部科学省, 富山県教育委員会, 富山市教育委員会, 富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
会議名: 日本デジタル教科書学会第7回年次大会(富山大会)
回次: 7
開催地: 富山大学 人間発達科学部
開催日: 2018/08/18 - 2018/08/19
新学習指導要領では、「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方」を鍛える実践の在り方の検討を進めることが求められている。そこで、本研究では、歌詞理解を深めることが、音楽的な見方・考え方を深め鍛えるものであるとの仮説を立て、学年段階に適した思考活動の在り方を検証する。実践は、小1・小3の2学年を対象とし、小1では思考ツール「ベン図」を用いて比較から考えた。小3では「フィッシュボーン図」を用い、大切にしたい箇所の理由を考える活動を行った。初めて「歌詞を考える」活動に取り組む小1の段階では、異なる曲想やテンポを楽曲との比較から考えたことで、結果として楽曲の特徴に着目することが出来ていた。また、全体で一つのベン図を作り上げる形態にしたことで、考える際のツールの活用方法についても理解の深まりが見られた。これまでに何度も歌詞を考える活動を行ってきた小3では、自分たちで主体的かつ対話的に歌詞について考え、伝え合う姿が見られた。さらに、「ロイロノート・スクール」の「回答共有機能」を児童の個人端末でも閲覧可能にし、各自が気になる回答について自由に他者との交流を通して学びを深める時間を設けた。どちらの学年も、国語での文章読解のように、一つの答えにまとめようとする傾向が当初は見られたが、歌詞特有の主語や助詞のない文章においては、歌い手が自由に想起することが可能であることを感じ取り、授業後半では、非常に独創的な発想も出された。また、音程やリズム活動など、児童の技術の差が生じやすい技能面ではなく、「歌詞」を取り上げたことで、音楽科の特質に応じた見方や考え方である「多様性」が児童の中で受け入れやすくなった。そして、自分なりの回答を、根拠を示しながら他者に伝えることが両学年で行うことが出来た。